広島の原爆資料館(平和記念資料館)に、混雑への対応策として、修学旅行生など若い世代を対象にした新展示が作られるそうです。
この記事中で興味を持ったのが、次の記述。
展示内容は今後、議論される予定ですが、VR=バーチャルリアリティーを活用した展示も検討される見通しです。
おそらく記事上の文脈としては「新しい技術を駆使した展示」ぐらいの意図しか無いのでしょうが、「VR」(バーチャル・リアリティ)の語から色々な事を考えました。
以前書いた「人を人たらしめるもの」という記事でも述べましたが、「バーチャル」(Virtual)はよく使われる〝仮想〟という訳語で抱く「実体の無いモノ」という印象とは違い、「実質として実物の代替になるもの」という意味を持っています。
なので、VRを使うという意味としっかり対峙すると、単にゴーグルを使って立体映像を見せるといった形態ではなく、「資料館の展示における実質とは何なのか?」というテーマと向き合わざるを得なくなります。
例えば、原爆投下前・後の広島に「実際に立っているような」超リアルなVR体験コンテンツが作られたとしても、(技術・体験としては興味がありながらも)それだけでは資料館の展示が持つ使命の「実質」を満たしているとは言えません。
一方、かつて多く展示されていた原爆の絵画などは、被爆した物品そのものや実写では無くとも、資料館の展示物としてひときわ色濃い「実質」を備えていたと思います。
今回の展示拡張は、混雑対策というオペレーション面での理由が発端ではありつつ、資料館の持つ使命の実質と再度じっくりと向き合った末の新展示が出来る事を(特に、今回は若い世代向けでもあるのでなおさら)願ってやみません。